平岡八幡宮は平安初期の大同4年(809年)、紅葉の名所で知られる高雄山神護寺の守護神として、弘法大師(空海)によって建てられました。

山城国(旧国名/現在の京都府南部の地域)最古の八幡宮として繁栄しますが、室町時代の応永14年(1407年)、火災により焼失してしまいます。

その後、荒廃していた神社を再建したのが、金閣寺を建てた室町幕府第3代将軍の足利義満でした。

義満の奥さんが女官とともに、高雄へ紅葉狩りに訪れた際、荒れ果てた八幡宮の姿に心を痛めたのが再建のきっかけになったといわれています。

祭神は応神天皇(誉田別命/ほむたわけのみこと)。

勝運や出世の神として崇められています。

さらに、狂言や歌舞伎などの曲目「靭猿(うつぼざる)」の舞台背景となった神社で、芸能の神様としても知られています。

ちなみに「水戸黄門」など数々の時代劇がここで撮影され、多くの俳優さんが訪れています。

また、境内中央には大きな土俵があり、ここで初代若乃花が奉納相撲を行いました。

この辺りは相撲が盛んで、昔から「三役相撲(さんやくずもう)」といって、10歳の男の子が大人と取り組み、大人が負け、子供が勝つというユニークな行事が伝わっています。

これは子供の健やかな成長と健康を祈るとともに、体の小さな子供でも全力で頑張れば、体の大きな大人を倒すことができるという意味があります。

この三役相撲は江戸の頃から今なお途切れることなく、毎年10月に実施されており、京都市無形民俗文化財に登録されています。



本殿内陣では、極彩色の花絵44面を描いた豪華な「花の天井」をご覧いただけます。

椿や山桜、紫陽花、水仙など…よく知られた花もあれば、薯蕷葵(とろろあおい)、万年青(おもと)などあまり聞きなれない植物もあります。

これは、江戸時代末期に画工・綾戸鐘次郎藤原之信が手掛けたとされていますが、実は足利義満が再建した室町時代に、すでに存在したともいわれています。

それは、義満の御所(室町第)が「花の御所」と呼ばれ、また自らも大変花を愛したことから、義満が花の天井を作ることを指示していたのではないかと推測されるからです。

また、この天井画からは義満が天皇になることを切望していたという強い思いも伝わってきます。

まず、44面の中で最も上座にあたる場所に牡丹(ぼたん)が描かれています。

牡丹は中国で皇帝の花、つまり日本では天皇を表します。

さらに、本殿の中には四羽の金の鳳凰が描かれており、鳳凰も天皇を表す鳥とされています。

そういえば、同じく義満が建てた金閣寺の屋上にも、金の鳳凰が飾られています。

平岡八幡宮を再建した半年後、義満は病死しますが、一方では暗殺されたという説も。

義満が天皇の座を狙っていたとすれば、暗殺も十分考えられる話です。

歴史を紐解くと本当に興味深いものですね。

義満の時代は北山文化が栄えたように、大変平和な時代でした。

まさに、この花の天井も贅を尽くした派手好み。

本殿の中にいると、そんな時代に思いを巡らせ、ついつい時間を忘れてしまいそう。

この花の天井は毎年春と秋に公開され、期間中は宮司さん自らが神社の由縁や花の天井にまつわるお話をわかりやすく説明してくださいます。

お話を聞いた後は、拝殿前でゆっくりおくつろぎください。

宮司さん手作りの梅と結び昆布の入った大福茶(おおぶくちゃ)を接待していただけます。

※2013年春の「花の天井」特別拝観は、3月8日〜5月19日まで(有料)。



平岡八幡宮は多くの椿が咲くことでも知られており、約200種300本の椿が境内を彩ります。

椿は花首がポロッと落ちることから、縁起が悪いと考えられていますが、それは江戸時代の武士道での解釈です。

椿は邪悪を払うといわれ、平安時代には長寿・招福・吉兆の木とされていました。

歴代の武将が愛用したほか、江戸時代には江戸鎮護の花木とされ、庶民の間で大ブームが起こるほど椿は大変人気があったのです。

また、白い花を付ける白玉椿は、茶道の茶花として用いられてきました。

ここ平岡八幡宮には珍しい種類の椿がたくさんあり、中でも「しだれ八重白玉椿」が大変人気です。

この白玉椿には、願い事をすると一夜で白い花が咲き、成就したという故事があります。

また、宮司さんのお祖父さんの俳名をとって、「一水(いっすい)椿」と銘が付けられています。

さらに「平岡八幡ヤブ藪椿」という樹齢500年の椿もあり、通常のヤブ椿がラッパ状なのに対し、こちらのヤブ椿は三角に花を開きます。

椿の花は香りがしませんが、良い匂いのする香椿「春風(しゅんぷう)」や金魚の形の葉をした「金魚葉椿」など、大変貴重な椿の数々をご覧いただけます。

椿が最も見頃になる春には、「椿を愛でる会」と題して一般に公開されます。

花の天井を参拝された方には、こちらも宮司さんが椿の説明をしながら、境内を案内してくださいます。

期間中は、通常非公開の社務所内で一番人気の白玉椿が拝見できるほか、今年は氏子さんから奉納されたという京友禅の椿の屏風も公開されます。

また「椿の小径」では数百種の椿はもちろん、円山公園のしだれ桜の子どもにあたる木など、見事な桜が参拝者を出迎えます。

遅咲きの梅もあるので、タイミングが合えば椿・桜・梅の豪華競演が楽しめます。

こちらに参られる方はお花を愛でながら、俳句を詠んだり、スケッチをしたり、お弁当を広げたり…楽しみ方は実にさまざま。

花に囲まれた八幡さんで、疲れた心をほっと一息休めてみませんか。

※2013年の「椿を愛でる会」は、3月15日〜4月14日まで(無料)。



今日もちょっと京都通。

では、次回もよろしくお願いします。



取材協力:平岡八幡宮
京都市右京区梅ケ畑宮の口町23
電話番号:(075)871−2084





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