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京都通

  • 2018/12/15

第341回 松ヶ崎大黒天『京都の表鬼門を守る、松ヶ崎の大黒さん』

江戸初期に創建された日蓮宗のお寺なんどす

毎年8月16日に火が灯される、京都の夏の風物詩「五山の送り火」。
その送り火のうち、「妙法」で名高い松ヶ崎山のふもとに、約400年前の江戸初期に創建された「松ヶ崎大黒天」はあります。
正式名称は松崎山妙円寺(しょうきざん みょうえんじ)といいますが、京都の人からは親しみを込めて、「松ヶ崎の大黒さん」と呼ばれています。

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関ヶ原の合戦の後、元和2年(1616年)に本涌寺(ほんゆうじ/現在の涌泉寺【ゆうせんじ】)内に日英上人の隠居所として建てられたのが始まりで、その日英上人によって開基・開創された日蓮宗のお寺です。
ちなみに、天正2年(1574年)創建の本涌寺は、法華宗の僧侶養成・学問所だったことから、「松ヶ崎檀林(まつがさきだんりん)」といわれており、今でも尼僧の学校「日蓮宗 尼衆宗学林(にゅしゅうしゅうがくりん)」として受け継がれています。

永仁2年(1294年)、日像上人(日蓮聖人の法孫)によって法華経が弘められ、徳治元年(1306年)に松ヶ崎の全村民が日蓮宗に改宗したことで、「松ヶ崎法華」とまでいわれるようになりました。
この改宗の時に、日像上人が自ら杖をもって、松ヶ崎西山に「南無妙法蓮華経」の題目から「妙」の字を書かれ、後に日良上人が東山に「法」の字を書かれたと伝えられています。
お盆の夜にくっきりと浮かび上がる送り火、来年は是非こうした歴史を踏まえてご覧になってみてください。

新春は福をもらいに七福神まいりに出かけまひょ

大黒堂に祀られているご本尊・大黒天像は伝教大師最澄の作で、京都の表鬼門を守る福の神として、また開運招福の神として広く信仰を集めています。
昭和44年(1969年)に火事で堂宇が焼失した際も、この大黒天像は無事だったことから、「火中出現の大黒天」と呼ばれています。
また、大黒堂の前には米俵に乗った大黒天の石像「なで大黒」があり、体の悪いところをなでて祈願できるようになっています。

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大黒天といえば、打ち出の小槌を持ち、ほほ笑みを浮かべるその姿から商売繁盛の守り神とされ、七福神としてもよく知られています。
七福神はその名の通り、福をもたらす七体の神様で、一般的には恵比寿、大黒天、毘沙門天、弁財天、寿老人、福禄寿神、布袋尊を指します。
日本、インド、中国発祥の神仏が混在していますが、それぞれの功徳力によって、災いを転じ、福運を授かりたいという願いから、古来の庶民信仰の中でも、特に七福神信仰は大変親しまれてきました。
元日の夜、七福神が乗った宝船の絵を枕の下に入れて寝ると縁起が良いという風習も江戸時代からあったそうです。

「都七福神」は室町時代に初めて京都の町衆の願いのもとに生まれた日本最初の七福神で、その後、全国に広まったとされています。
特に、新春に七福神が祀られた寺社をめぐって、七体の神様に参拝すると「七難即滅、七福即生」といわれ、功徳が大きいとされることから、この時期は全国から福を求める参拝客で賑わいます。
各寺社に大護符(色紙)が用意されているので、そこに御朱印を授与していただきましょう。
また、毎年元日より1月末まで定期観光バスが運行されているので、気軽に七福神めぐりが楽しめるようになっています。

大黒さんのお祭りにおいでやす

大黒天は秘仏となっていますが、年6回の甲子大祭(きのえねたいさい/60日に1回)のときにご開帳されます。
当日は朝9時から夕方4時まで諸願成就の御祈祷が行われ、福寿円満・開運招福のご幣(ごへい)が授与されます。
ご幣は大黒天の尊像をかたどって造られたご神体です。自宅の神棚や仏壇に60日間お祀りし、朝夕手を合わせて祈り、次の甲子大祭のときに納めて、また新たなご幣を受けます。
この日はお茶席やおそばの出店などがあり、多くの参拝者で賑わいます。

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また、来年は甲子大祭限定の御朱印がいただけるとのこと(平成31年度限定)。
年6回ある甲子大祭のすべての御朱印(6種類)を集めると、その年最後の甲子大祭で特別に御祈祷を受けることができます。
各甲子大祭につき、御朱印は100枚限定となりますので、ご希望の方はお早めにお越しください。

そのほか、2月3日の節分会では厄除けの祈祷が行われ、御祈祷を受けた方には特別なお守りが、また参拝された方には節分豆が授与されます。
2月15日の大加持祈祷会(だいかじきとうえ)は100日間の荒行を終えた僧侶を迎え、水行式、お火焚、お加持祈祷が行われます。
そして、来年から開催されるのが4月7日の花まつりです。
法要後はお釈迦さまに甘茶をかけてお参りができる予定です。

大黒天のシンボルといえば「打ち出の小槌」ですが、境内のあちこちにそのデザインが見られ、絵馬にも、そして建物の瓦にも使われています。
参拝の際は、打ち出の小づち探しも合わせてお楽しみください。

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松ヶ崎大黒天は、春はしだれ桜、夏は新緑、秋はイチョウや紅葉が楽しめる知る人ぞ知る穴場スポットです。
是非、季節の移ろいを感じながら、さまざまな行事に足を運んでみてはいかがでしょうか。

※平成31年(2019年)の甲子大祭
1月27日、3月28日、5月27日、7月26日、9月24日、11月23日

取材協力 : 松ヶ崎大黒天
〒606-0943 京都府京都市左京区松ヶ崎東町31
電話番号 : (075)781-5067
FAX番号 : (075)722-1424

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