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京都通

  • 2019/5/18

第346回 京指物資料館『日常の中にある日本が誇る伝統工芸・京指物』

京指物ははんなりと洗練されてるんが特徴どす

京都御所の南を東西に走る夷川(えびすがわ)通りは家具の専門店が立ち並び、「家具の街」として古くから知られています。
中でも、安政3年(1856年)創業の「宮崎」は桐タンスをはじめ、和家具、さらには建築内装なども手がける老舗で、本店正面の北店2階には日本でも珍しい資料館があります。
それは、宮崎の創業155年を記念して、平成22年(2010年)に建てられた「京指物資料館」です。

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指物(さしもの)とは金釘や接合道具を一切使わず、木と木を組み合わせる組み手という技法、またはその技法を使った家具や建具、調度品などの伝統工芸品の総称をいいます。
指物と呼ばれる由来は、木と木を指し合わせるところからきているとも、物指しを使うところからきているともいわれ、諸説あります。

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有名なものとしては「京指物」と「江戸指物」があり、江戸指物は江戸時代に武家文化とともに発展し、粋で、木地に桑やケヤキを使うことで、大胆に木目を魅せるものが多いのが特徴です。
これに対し、京指物は平安時代に貴族文化の中で生まれ、室町時代に茶道文化の確立ともに発展しました。
木目の目立たない桐やヒノキを用いることが多く、蝋色(ろいろ)の漆(うるし)、螺鈿(らでん)、金工を施した装飾的でありながらも、シンプルで洗練されたものが多いのが特徴とされています。

有名な画家さんの図案も見ておくれやす

資料館には火鉢や茶道具などかつての生活用品から、金具の細工が繊細でモダンな「飾り棚」、大正時代に指物の名人・三好弥治兵衛氏が手掛けた「袋棚」など、美しく貴重な指物が多数展示されており、京指物の伝統技術を現代に伝えています。

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明治時代には、三代目・宮崎平七がこれまで一道具だったタンスを工芸品として認めてもらおうと、京都在住の画家に図案を、製作には京都在住の指物、漆器、蒔絵の名工に依頼し、タンスを工芸品に押し上げたという歴史があります。
その当時、図案を考案したのが、京都画壇で活躍した竹内栖鳳(たけうちせいほう)や上村松園(うえむらしょうえん)、神坂雪佳(かみさかせっか)といった有名画家で、飾り棚の天袋の戸に描かれる図案など貴重な資料を見ることができます。
神坂雪佳が図案を、そして実弟で蒔絵師である神坂祐吉が手掛けた「平目地斎宮蒔絵硯箱」は、御簾(すだれ)の繊細な表現が大変美しく、貴重な作品となっています。
神坂雪佳は今でいうインテリアコーディネーターのような仕事もしており、部屋全体を描いた図案も見ることができます。
さらに、天皇家の婚礼家具を製作してきた歴史や、皇居の豊明殿や京都の迎賓館の内装工事も請け負った実績もあり、展示されている写真からその様子を見て取れます。

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ちなみに、タンスや飾り棚など展示物の一部は値段が付いており、購入することも可能です。
普段の生活で何気なく目にしていても、なかなか知る機会の少ない指物の世界。
ここに来ると、新しい発見があるかもしれません。

桐タンスが新品みたいに甦るんやてなぁ

日本では昔からタンスといえば、桐タンスが有名です。
桐は湿気によって膨張するなど、木目が詰まる性質があり、収納した衣服も湿気の影響を受けづらいといわれています。
また、火にも強く、表面が焦げても中まで火を通さないということで、桐は耐火性・防火性、防虫効果に優れ、日本の暮らしの中で古くから愛されてきました。
桐タンスはかつて嫁入り道具の一つであり、おばあさんの嫁入りタンスを孫の代まで使うことは当たり前のことでした。
もちろん、螺鈿や蒔絵を施した桐タンスなら、なおさら長く愛用したいもの。金釘を使うと錆びてしまい、タンスのもちが悪くなりますが、指物の技術を使ったタンスは何度も修復することが可能です。
長年使われた桐タンスは、塗装や汚れをお湯で洗い流し、削り直し、再塗装する職人の卓越した技術で、新品のように蘇ります。
この工程を「更生(こうせい)」といい、資料館の中にある工房では、運が良ければ更生の作業を見学することができます(※日によってご覧になれない場合があります。ご了承下さい)。

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向かいにある本店では伝統的な桐タンスや、畳椅子などオリジナル家具が並び、旧本店から移築された茶室が出迎えます。
畳椅子は、日本の近代住宅を代表する傑作「聴竹居(ちょうちくきょ)」を手掛けた建築家・藤井厚二氏の意匠を原型としたもので、伝統的な京指物の技術が存分に生かされています。

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指物といっても決して過去のものではなく、桐箱など、今の生活の中で目にできるものも多数あります。
2019年6月15日(土)、16(日)には京都のしまだいギャラリーにて、京指物の職人が手掛けた様々な作品・技術が見られる「第45回京都木工芸展」が開催されます。
ご興味のある方は、是非こちらも合わせてご覧ください。

取材協力 : 京指物資料館
〒604-0805 京都市中京区夷川通堺町西入る絹屋町129番地 宮崎平安堂ビル2F
電話番号 : 075-222-8221
FAX番号 : 075-222-8223

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