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京都通

  • 2009/10/31

第150回 永観堂 禅林寺『紅葉の永観堂で仏教美術に触れる』

お寺の歴史よりも古い紅葉があるんどすえ

京都には、紅葉の名所として有名なお寺はたくさんあります。
しかし、「紅葉の」と呼ばれているのは、「紅葉の永観堂」しかありません。
永観堂と切っても切り離せない紅葉は、何に由来しているのでしょう。

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永観堂の歴史は、平安時代にまで遡ります。
創建は貞観5(863)年。
弘法大師の弟子であった真紹(しんじょう)僧都が、公家の藤原関雄(ふじわらのせきゆう)に別荘を寄進されたことが始まりでした。
藤原関雄は、「古今集」に
「おく山の 岩がき紅葉 散りぬべし 照る日の光 見る時なくて」
という歌をのせています。
ここで歌われているのが、当時の別荘。現在の永観堂を指しているのです。

そして、この歌に出てくる「岩がき紅葉」は、今でも永観堂で見ることができます。
東山の斜面とも言えるような急勾配の傾斜に、しっかりと根を下ろしている紅葉は、今でも毎年、秋には見事に赤く色づいているのです。
創建以来千百有余年の歴史を持つ永観堂よりも前から、岩がき紅葉は人々を魅了していたことになります。
そのため、永観堂は創建のその時から、「紅葉」で有名なお寺であったことがわかります。
そして現在、紅葉は公称3000本といわれるくらい、永観堂全山を埋め尽くしているのです。

紅葉と一緒に寺宝も楽しんでおくれやす

永観堂では、紅葉の季節にあわせて、寺宝展を開催しています。
長い歴史を持つ永観堂には、2つの国宝と数多くの重要文化財を含むたくさんの寺宝があります。
しかし、軸や楽器、仏教美術品の多くは、美術館に保管されており、通常は目にできないものがほとんど。
それらの貴重な寺宝を1年に1度だけ、紅葉の季節にあわせて、里帰り展示を行っているのが、寺宝展です。

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寺宝展は全山で行われており、貴重な寺宝を拝観しようと多くの人々が訪れます。
寺宝展と聞くと、宝物殿のような場所に、寺宝を展示して鑑賞するように感じますが、永観堂では、孔雀の間(対面所)、瑞紫殿、釈迦堂などを通常拝観できる場所に、展示されるのです。
紅葉のお庭を眺めたり、仏教美術に見入ったり、自然と文化の2つを1度に堪能できる、またとない機会と言えるでしょう。

もちろん、みかえり阿弥陀様として知られるご本尊や火除けの阿弥陀様など、通常でも参拝できる仏像なども、それぞれに味わいがあり、思わず手を合わせたくなる荘厳な雰囲気を醸し出しています。
みかえり阿弥陀様をお祀りしている阿弥陀堂は、彩色工事がなされ、創建当時を彷彿とさせる極彩色の装飾に生まれ変わりました。
華やかな堂内で拝むみかえり阿弥陀様は、これまでとはひと味違うことでしょう。

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※寺宝展は2009年11月7日(土)~12月6日(日)まで開催されています。詳細は直接お問い合わせください。
※写真の国宝・金銅蓮華文磐(けい)と重要文化財・紙本墨画波濤図は、今回の寺宝展には出展されません。

夜の紅葉も楽しんでおくれやす

永観堂では、夜の紅葉も楽しんでいただくために、ライトアップを行っています。
夜の闇の中、ライトに照らされて浮かび上がる紅葉の美しさは、昼間とはまた違った味わいを見せてくれます。

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ライトアップは、宵闇のせまる頃から始まります。
通常の拝観時間の終了後、全ての参拝客の方々に退出していただいてから、再度開門されるシステムになっています。
毎年、ライトアップを楽しみに訪れる方々は、開門の前から並んで待っておられるそうです。
拝観時間の終了間際に入って、そのままライトアップまで楽しんでいくことはできません。
訪れてくださった方々をみんな平等に処遇したいという、お寺の考えから、そのようにされているそうです。

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お庭の中でも、紅葉観賞で人気の高い放生池では、橋の欄干がライトアップされて浮かび上がるなど、幻想的な風景も見られます。
池を取り囲むように生い茂る真っ赤な紅葉と、闇を映す池のコントラストも見ものです。
ライトアップの時間帯でも、本堂と画仙堂は拝観が可能。
本堂から、闇の中で浮かび上がる紅葉を眺めるのもおつなものです。
そして最後には、阿弥陀堂でご本尊のみかえり阿弥陀様に手を合わせて、美しい紅葉を見せていただいたことを感謝して帰りましょう。
永観堂は、仏教の聖地です。
仏様への感謝の気持ちを持って、訪れたいものです。

※ライトアップは、2009年11月7日(土)~30日(月)に開催されています。詳細は直接お問い合わせください。

取材協力 : 浄土宗西山禅林寺派 総本山 永観堂 禅林寺
〒606-8445 京都市左京区永観堂町48
電話番号 : (075)761-0007

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