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京都通

  • 2017/2/25

第319回 川島織物セルコン 織物文化館『最高級の織物技術が結集した企業ミュージアム』

世界に誇る織物のトップメーカーなんどすえ

京都市の郊外、自然豊かな緑に囲まれた鞍馬山の近くに拠点を置く「川島織物セルコン」。「川島の帯」と言えば、着物好きな方にとっては憧れの高級ブランドとしてその名が知られていますが、この会社の始まりは江戸後期の天保14年(1843年)にまで遡ります。織物の町・西陣で初代川島甚兵衞が創業した川島織物は「呉服悉皆業(ごふくしつかいぎょう)」として、着物に関するさまざまな業務を扱ってきました。着物をおすすめしたり、お直しをしたり、今でいうトータルコーディネーターのようなもので、ひと昔前の百貨店の外商のような役割を担っていたのだそう。

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その長男である二代川島甚兵衞は手仕事による伝統的な日本の織物をより発展させながら、父親譲りの商才を発揮し、様々な改革に乗り出します。視察でヨーロッパを訪れた際には「これからは着る物だけでなく、室内装飾にも織物が使われていくだろう」と考え、さらにはフランス王室御用達のゴブラン織に感銘を受けたことから、室内装飾の分野に進出し始めます。明治や昭和宮殿の内装などを手掛け、明治22年(1889年)にはパリ万国博覧会で金賞を受賞、明治24年(1991年)には国内初の宮内庁御用達となるなど、古くから国内外で高い評価を受けてきました。

現在では、カーテンをはじめとするインテリア関連商品、そして東京の歌舞伎座や大阪のフェスティバルホ-ルに代表される舞台の緞帳(どんちょう)など様々な織物を手掛け、織物のトップメーカーとして業界をリードし続けています。

二代はんが伊藤若冲を世界に広めたんやてなぁ

ヨーロッパ視察の際、現地の美術館や博物館などを訪れた二代川島甚兵衞は、日本に織物専門の美術館や博物館がないことを実感し、帰国後、日本式室内装飾の提案をするために「織物参考館」を設立しました。この企業ミュージアムが、現在の「織物文化館」の始まりで、当初は三条高倉にあった二代甚兵衞の自宅に建てられました。1~2階部分を博物館と図書館施設に、そして3階に応接室を作り、国内初のインテリアショールームを設けたのです。それまでの日本の和風建築に織物はほとんど使われていませんでした。しかし、明治時代に洋風建築の建物が増えてきたことから、日本にカーテンやイスなど室内装飾を織物でコーディネートした部屋を普及しようと考えたのです。

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そこで、川島織物が作る室内装飾は純国産でいこうと、川島の織物技術を結集させ、尾形光琳の絵を基に作ったつづれ織りを壁一面に装飾するなど、日本ならではのデザインで華やかにコーディネートし、完成したのがこの応接室でした。この織物文化館には新商品開発や研究のために長年収集してきた国内外の珍しい織物のコレクション、川島織物の特注品やタペストリーの試し織や原画、製作資料など約16万点を収蔵しています。今の市原の場所に工場や本社とともに移ってからも、テーマごとに企画展が開催され、会社関係者や観光客、服飾を学ぶ大学生、修学旅行生に海外からのお客様など、様々な方が見学に訪れます。

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では、織物文化館で現在ご覧いただける作品をいくつかご紹介しましょう。「京絵師 若冲を世界へ」では、江戸時代中頃に京都で活躍した画家・伊藤若冲の関連作品が展示されています。アメリカのセントルイスで明治37年(1904年)に開かれた万国博覧会に、「若冲の間」を出展。洋風の室内にしっくり馴染む題材として選んだのが伊藤若冲の作品で、二代甚兵衞が初めて「Jakuchu」の名を世界に発信したといわれています。ちなみに、万博で配布した川島織物の会社紹介のパンフレットにも若冲の紹介がされており、それ以前にも意匠登録織物模様やドイツ帝室への献上品に若冲の絵画を織り込んできました。織物になった珍しい若冲作品、これは若冲ファンならずとも必見です。

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祇園祭の色鮮やかな懸想品にも注目しておくれやす

「華やかなりし京都 祇園祭」では、日本三大祭りの一つ、祇園祭を取り上げ、その最大の見せ場である山鉾巡行の様子を織物で表現した「洛中洛外図(祇園祭)」を中心に、祇園祭に関わる織物や資料をご覧いただけます。この「洛中洛外図(祇園祭)」は昭和44年(1969年)に、国宝「上杉本洛中洛外図屏風」の右隻第三扇下部を原画に作られた、つづれ織の壁掛けで、京都グランドホテル(現・リーガロイヤルホテル京都)に長年飾られていました。今回は役目を終えて里帰りしたため、修復を施し、再びお披露目となったのです。

そのほか、鯉山(こいやま)の見送を復元修復した際の原画や資料、使用された糸などを併せて展示しています。実は長刀鉾をはじめ、祇園祭の山車の多くに川島織物が製作した懸想品が使われています。祇園祭のお囃子が流れるこの空間で、是非、お祭り気分を味わいながら祇園祭の作品をご堪能ください。

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そして、「発想力は無限大~明治期からの川島織物の商品」では、平成29年(2017年)の干支「酉年」にちなんで、鳥が描かれたさまざまな織物を展示しています。明治初期から本格的に織物を製作してきた川島織物では、花鳥の文様を最も多く使用してきました。おめでたいことに使われる「鳳凰」「鶴」「鶏」をはじめ、華やかな「孔雀」、身近なところでは「雀」や「燕」、さらには「千鳥」や「鳩」などさまざまな鳥たちがお目見えします。明治宮殿の「鳳凰の間」の壁面装飾や、明治35年に製作された壁掛け織下絵「百花百鳥(百花孔雀)」は見応えたっぷりです。輪郭を強調しながらも、薄い色で描かれた下絵は、完成した織物にはない趣が感じられます。

そのほか 明治20~37年(1887~1904年)頃に製作した窓掛(カーテン)の資料などを展示した「『窓から世界が広がる』~川島が手掛けた窓掛~」や、皇室関係の貴重な写真や資料が展示されているコーナーもあります。こちらは見学に来られた方だけのプレミアムな空間となっています。是非足を運んでお楽しみください。

※特別展「『窓から世界が広がる』~川島が手掛けた窓掛~」は平成29年春頃まで、「京絵師 若冲を世界へ」は平成29年4月28日(金)まで、「華やかなりし京都 祇園祭」は平成29年の祇園祭が終わる頃までの開催となります。

展示期間、展示物はそれぞれ変更の可能性があります。また、織物文化館の見学は事前予約制です(入館料は無料です)。お電話でご予約の上、お越しください。

http://www.kawashimaselkon.co.jp/bunkakan/exhibition/index.html

取材協力 : 川島織物セルコン 織物文化館
電話番号 : 075-741-4323(ご予約専用)
電話番号 : 075-741-4120(作品に関するお問い合わせ・その他)

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