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京都通

  • 2017/7/15

第324回 京都府立 京都学・歴彩館『京都を学びながら、世界とつながる交流の場』

府立資料館が新しく生まれ変わったんどすえ

地下鉄北山駅の南側に建つモダンな建物。ここ「京都府立 京都学・歴彩館」(以下、歴彩館)は京都北山の新たな文化・学習交流拠点として、平成29年(2017年)4月28日にグランドオープンしました。

京都に関する資料の総合的な収集・保存・公開を昭和38年(1963年)から50年以上続けてきた府立総合資料館が昨年9月に閉館。それに代わる歴彩館には、京都の歴史・文化に関する研究支援や学習・交流の機能が加わり、充実した内容となっています。館長の思いにより、"京都学"にはあえて定義は設けず、京都における様々な学びを広く追究していくことをスタンスとしています。

建物を京都で初めて国際コンペをされたそうで、京都の碁盤の目の街並みや町家をモチーフに、重なり合う屋根をイメージしたデザインとなっています。館内でも通路や各部屋の配置、ところどころにある緩やかな段差に京都の街並みが表現されています。また、格子状に組まれた鉄骨と壁一面のガラスから差し込む光が明るい空間を作り出し、とても開放的な印象を受けます。天井など随所に府内産の木材が使われ、太陽光や地中熱、雨水を活用するなど環境にも配慮されています。

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建物は地下2階から地上4階まであり、3~4階は京都府立大学文学部の専用フロアで共同研究室や実習室などが設けられています。地下1~2階は気密性・耐火性に優れた地下収蔵庫となっており、国立国会図書館と同様に24時間空調機を導入し、温度や湿度を一定に調整した中で大切な資料を保管しています。

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1階中央の「光庭(ひかりにわ)」は癒しの空間となっており、苔の周りに敷き詰められた石は、この施設を建てる際に地中から出てきた石を再利用しています。館内の絨毯をモスグリーンにすることで、苔庭から地続きに感じるような細やかな工夫もなされています。

京都のさまざまな文化に触れておくれやす

まず建物に足を踏み入れると、広々としたエントランスが来館者を迎え入れてくれます。1階奥には「京都学ラウンジ」があり、国内外から来られた方が京都の学びを広げられる交流スペースとして、様々なワークショップやパネル展示を行っています。隣の「京都学デジタル資料閲覧コーナー」では、これまで東京大学史料編纂所(へんさんじょ)でしか見られなかった「陽明文庫(ようめいぶんこ)」の貴重な資料のデジタル画像約5万コマを閲覧することができます。

陽明文庫とは公家の名門「近衛家」伝来の古文書などを収める収蔵庫で、近衛家は宮廷の中心として政治や儀式を執り行ってきたため、奈良・平安時代から近代にいたるまで、国宝や重要文化財を含む約20万点の古文書や美術工芸品が伝わっています。例えば江戸時代の当主の日記を読むと、公家が当時どんなことを考えていたかが垣間見られるなど、大変興味深い資料となっています。

エントランスのすぐ左側にある展示室では、期間ごとに企画展が開催され、京都府が所蔵する文書資料や美術工芸品などが無料で鑑賞できます。7月22日から10月8日までは「京都の歴史を彩る人々(仮)」と題して、たばこ王と呼ばれた村井吉兵衛、グンゼ創業者の波多野鶴吉、京都で大学を設立した新島襄や中川小十郎、さらには歴代の知事など、京都の歴史を築き上げた人物像にスポットを当てて紹介します。さらに、10月14日から開催される「池大雅展」では、京都を代表する江戸時代の文人画家・池大雅(いけ たいが)の作品や関係資料を展示する予定です(12月10日まで)。会期中は定期的に職員が展示品の解説を行いますので、ご希望の方は開催日をお問い合わせの上、ご来館ください。

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また、同じく1階には自習に最適な学習室のほか、国際会議やセミナーなどに利用できる大・小のホールもあります。これまで、映画「武士の家計簿」の原作者で歴史学者の磯田道史さんや細川家に代々伝わる歴史資料を保存する公益財団法人永青文庫理事長である細川護熙さんの講演会、そして「琳派」や伊藤若冲をイメージした衣装を手掛けている世界的ファッションデザイナー・桂由美さんのファッションイベントを行うなど、多彩なラインナップで好評を博しています。そのほか、京都学を学ぶセミナーなど、今後も数々のシンポジウムや講演会が開催される予定です。
※陽明文庫の閲覧は7日前までの申し込みが必要です。

大学の図書も貴重な文献も読めるんやてなぁ

2階の「探究フロア」には開架スペースとさまざまな場所に設けられた約350席の閲覧スペースがあり、京都のガイドブックや最新のローカル雑誌、フリーペーパー、パンフレットなど、京都に関する資料の数々が閲覧できます。

開架にあるのは収蔵資料のほんの一部で、地下1~2階の書庫に保管されている多数の資料も申請すれば取り出してもらうことが可能です。これまでとの大きな違いは、京都府立大学・府立医科大学附属図書館所蔵の図書約20万冊が加わり、旧資料館の図書や古文書等と合わせた、計約94万点の文献・資料が閲覧できるようになりました。ちなみに、公立の図書館や資料館と大学付属図書館を一つのフロアで提供している施設は、全国でもここだけなんだとか。今までは館内の閲覧のみでしたが、府立大学の図書については一部貸し出しもできるようになりました。

また、貴重な古文書や美術工芸品のほか、ユネスコ「世界の記憶」に登録された国宝「東寺百合文書(とうじひゃくごうもんじょ)」も展示会の際には観賞することができます。「東寺百合文書」とは京都の東寺に伝えられた、8世紀から18世紀までの約1千年間にわたる膨大な古文書で、その数およそ2万5千通。実物を目の前で見られる貴重な機会とあって、専門家だけでなく一般の方も幅広く観賞されています。

こちらの開架スペースは、平日は午後9時まで開館しているので、学生だけでなく仕事帰りの会社員も利用しやすくなっています。隣の稲盛記念会館1階にはソファやテラス席を備えたカフェスペースがあるので、ランチやお茶も楽しみながらゆっくり一日を過ごせそうです。府立大学のキャンパスや府立植物園も一続きの敷地になっているので、様々な空気を感じながら、京都のさらなる魅力に触れてみてはいかがでしょうか。

取材協力 : 京都府立京都学・歴彩館
〒606-0823 京都市左京区下鴨半木町1番地29
電話番号 : 075-723-4831
FAX番号 : 075-791-9466

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