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京都通

  • 2017/8/19

第325回 将軍塚青龍殿『京の街並みを一望できる新たなパワースポット』

京の都は将軍塚から始まったんどすえ

皇室とゆかりの深い門跡寺院として高い格式を誇る「青蓮院門跡」。ここから少し離れた飛地境内(とびちけいだい)に平成26年(2014年)10月、「将軍塚青龍殿」が誕生しました。

一番の見どころは、東山山頂に新しく作られた木造の大舞台です。大舞台といえば、清水寺の舞台が有名ですが、青龍殿の大舞台はその4.6倍もの広さ(1046平方m)があります。

大舞台からは京都御所、鴨川、平安神宮などの有名観光スポットをはじめ、京都市内全域が見渡せ、空気が澄み切った日には比叡山や生駒山、さらには大阪近郊まで眺めることができます。

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ちなみに、雨の日は雲の上にそびえ立つ天空のお堂として迫力ある景色が楽しめます。京都をよく知る方も初めて京都を訪れる方にとっても、この町の地理を知ることができる絶好のロケーションになっています。

境内には「将軍塚」と呼ばれる、直径約20m、高さ3mの小高い丘があります。実は、平安京が始まったとされる場所がこの将軍塚なのです。約1200年前、桓武天皇は奈良から京都の南にある長岡に都を移しますが、様々な災難に見舞われました。そこで、家臣の和気清麻呂が桓武天皇をこの山上へお誘いし、三方を山に囲まれたその土地を見下ろしながら「この場所こそが都にふさわしい」と進言したのです。

桓武天皇はその勧めに従って、延暦13年(794年)に平安建都に着手しました。そして、都の安泰を祈願し、高さ2.5mほどの将軍の土像に甲冑を着せ、弓と刀を持たせてこの塚に埋めるよう命じたのです。

これが「将軍塚」と呼ばれる由来で、国家に異変があるときは激しく揺れ動いたといわれています。また、南北朝時代、南朝方の新田義貞と北朝方の足利尊氏が激戦を繰り広げたという、歴史的に大変由緒ある場所でもあります。

国宝・青不動さんをいつでも拝めるんやてなぁ

もう1つの見どころは、大舞台とともに新しく建てられた「青龍殿」です。青龍殿は大正2年(1915年)、大正天皇の即位を記念して、「大日本武徳会京都支部道場」として京都・北野天満宮前に建てられ、剣道や柔道など武道の精神を伝えてきました。

戦後の昭和22年(1947年)には「平安道場」として警察の柔道剣道の道場となりますが、平成10年(1999年)に閉鎖され、解体処分を決定したのです。そこで、青蓮院が京都東山山頂に「青龍殿」として移築再建することで、歴史的文化遺産の継承に力を注ぎました。

貴重な大木のヒノキを使ったこの木造の建物は一見、純和風に見えますが、屋根を支える小屋組みと建物を支える基礎は外来の技術が用いられており、「和洋折衷」といった大正時代建築の特徴を示しています。この青龍殿には青蓮院が誇る国宝「青不動明王二童子像」が安置され、精密な複製画を祀ることでいつでも参拝が可能になりました。

平安時代の中期、11世紀頃の作とされる絹本礼拝画像で、もともとは宮中にあったとされています。その青黒い身体の色から、通称「青不動」と呼ばれ、我が国仏教絵画史の最高傑作の一つとして、いち早く国宝に指定されました。

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激しく燃え盛る炎の中央に、岩の上にどっしりと座る青不動明王が浮かび上がります。右手には降魔の三鈷剣(ごうまのさんこけん/悪魔を降伏させる剣)を、左手には四魔を縛する羂索(けんさく/縄状の仏具)を持ち、あらゆる煩悩を焼き尽くす忿怒(ふんぬ/怒り)の相は迫力満点です。

この不動画は大変貴重なもので、高野山明王院の「赤不動」、大津三井寺の「黄不動」とともに日本三大不動の一つに数えられています。

四季折々の風景を楽しんでおくれやす

将軍塚の境内には紅葉(約220本)、桜(約200本)、さらには源平枝垂れ桃、椿、藤、シャクナゲ、サツキ、アジサイなどが植えられ、とりわけ紅葉や桜の名所となっています。春と秋の時期にはライトアップが実施され、情緒あふれる桜、あるいは深紅に染まる紅葉と、京都市内の夜景との競演を楽しむことができます。

将軍塚の隣にある庭園は、前半部分が回遊式庭園、後半部分は枯山水庭園になっており、技術的にも芸術的にも最も優れた室町時代の手法を用いて作庭されています。また、借景庭園として東屋からの将軍塚や西山の遠望も外すことはできません。

そして、日露戦争で活躍した海軍の司令長官・東郷平八郎元帥や、元首相で早稲田大学創立者の大隈重信、数学者で東大・京大総長を務めた菊地大麓などが安泰を願い、この庭に松を植えるなど、歴史を偲ぶに相応しい場所となっています。

なお、交通手段は東山の山頂という立地上、車やタクシー、循環バスなどを利用するのが一般的ですが、足に自信のある方は山沿いに整備されている東山トレイルコースを歩いて登ることもできます。それほど険しい道ではないので、ハイキングには最適です。

人混みもそれほど多くなく、静かでゆったりした時間を過ごすことができる京都の新名所「将軍塚大舞台」。是非、圧倒的スケールと市内一望の大パノラマをじっくりとお楽しみください。
※青龍殿行きの循環バス(京阪バス)は土・日・祝日のみ、および4月・5月の連休と11月の全日のみの運行となっています。お出かけの際は京阪バスのホームページなどでご確認ください。

取材協力 : 将軍塚青龍殿
〒607-8456 京都市山科区厨子奥花鳥町28
電話番号 : 075-771-0390

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