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京都通

  • 2017/12/23

第329回 フォーエバー現代美術館 祇園・京都『日本独自の美術鑑賞スタイルで楽しむ現代アート』

草間彌生ワールドが堪能できる美術館なんどす

平成29年(2017年)6月、 多くの観光客で賑わう京都の花街に開館した「フォーエバー現代美術館 祇園・京都」。その建物は毎春、芸妓や舞妓による舞踊公演「都をどり」の会場で知られる祇園甲部歌舞練場内の「八坂倶楽部(やさかくらぶ)」が使われています。大正2年(1913年)に建てられた木造2階建ての建物は有形文化財に指定されており、展示室はすべて畳敷きです。そのため、展示作品は少し低めに設置され、履物を脱いで寛ぎながら、そして畳の上に座って作品を鑑賞するという日本独自のスタイルとなっています。

展示室は4部屋あり、それぞれの部屋の壁には京都の五花街で見られる「浅葱(あさぎ)」や「弁柄(べんがら)」といった日本古来の色彩が用いられています。現在はオープニング展として、「フォーエバー現代美術館コレクション 草間彌生 My Soul Forever展」が開催されています。美術館所蔵の6割近くを占めるという草間彌生作品約400点の中から、81点が展示されています。

当初は平成29年(2017年)10月29日までの予定でしたが、好評のため、平成30年(2018年)2月25日(日)まで会期が延長されることになりました。草間彌生氏といえば、水玉(ドット)柄のアート作品でおなじみの世界的アーティストで、鮮やかな色づかいやポップな作品は女性を中心に幅広い層の人々に支持されています。

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美術館の屋外入り口では、常設展示として、草間氏が手掛けた直径5メートルのパブリックアート「南瓜」(2007年)が出迎えます。館内に入る前から思わずテンションが上がってしまう、絶好の撮影ポイントとなっています。

※祇園甲部歌舞練場は耐震工事のため、一時休館しています。毎春恒例の「都をどり」は場所を移して上演されています。(2017年12月現在)

貴重な初期作品もいっぱいあるんやて

第1展示室に入ると、まず目の前に飛び込んでくるのは草間氏の代表作「黄樹」(1992年)という巨大な作品。2017年2月に東京の国立新美術館で開催された個展「草間彌生 わが永遠の魂」にも貸し出された作品で、黄色い樹木が複雑に絡み合い、無限の円が描かれていますが、よく見ると水玉(ドット)の連続で構成されているのが分かります。

実はこちらの美術館の穂積館長が草間コレクションを収集するきっかけとなったもので、まさに「この一枚からすべてが始まった」と言うべき思い入れの深い作品です。この部屋ではほかに、草間氏が渡米する前、画家として出発したばかりの1950年代の貴重な作品が展示されています。

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そして、真っ青な浅葱色の壁が印象的な第2展示室では積極的に作家活動をスタートさせたニューヨーク時代の代表作「無限の網」(1963年)や、南瓜モチーフ作品の初期から現代までが並んでいます。中でも、百科図鑑から切り抜かれた鳥や魚など動物の図版を使ったコラージュ作品は乙女心をくすぐります。さらに、第3展示室では「雑草」(1996年)をメインに、植物やファッション関連のモチーフ作品を展示しています。ドレスやハイヒールなどがモチーフに使われているのは、草間氏がニューヨーク時代、ファッション・ブティックを開くなど、ファッションに強い関心を持っていた表れです。

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また、約130畳ある2階の第4展示室では、動植物のモチーフをメインにした作品や、能舞台に置かれた立体作品「私の魂を乗せてゆくボート」(1989年)をご覧いただけます。ちなみに、版画においては、草間氏が制作した全372点のおよそ95%にあたる352点をこの美術館が収蔵しています。その中でも、最も多く制作されたのが「南瓜」をモチーフにした版画で、赤・緑・青とカラーバリエーションが一度に楽しめるのもこの美術館の大きな特徴となっています。

お庭やカフェもアート感覚で楽しんでおくれやす

建物奥には純日本庭園があり、紅葉や桜など季節折々の風景も一つのアート作品としてお楽しみいただけます。庭園ギャラリーからはお庭をゆっくり眺められるのはもちろん、ギャラリーの壁には木版画で制作された京唐紙がしつらえてあり、こちらもアート作品の一部としてご覧いただけます。

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そして、京都らしい演出としては、実際に禅宗のお寺で使われている座禅用の座布団が置かれているので、気軽に座禅を体験していただけます。また、天気の良い日はお庭に出て散策も楽しめます。唐傘の貸し出しもあるので、着物で訪れるとさらに京都ならではの情緒ある写真が撮れそうです。

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館内のミュージアムショップには草間氏関連のTシャツや手ぬぐい、ポストカード、南瓜のオブジェなど約120点のグッズや美術館オリジナルのアイテムが販売されています。その隣には美術館に来られた方だけが利用できるミュージアムカフェがあります。こちらは大阪・北浜の人気カフェ「NORTH SHORE」がプロデュースするお店で、約100席ある店内には日本庭園を眺められる席も用意されています。

ここでは体に優しいオーガニック素材をふんだんに使ったサンドイッチや草間氏をイメージして作られた水玉スイーツなど、美味しくてヘルシーかつ見た目もかわいいオリジナルメニューを味わうことができます。開館当初、大々的に告知はしてなかったものの、徐々に口コミやメディアによって話題となり、来館者は日に日に増え続けています。また、伝統ある八坂倶楽部は中に入りたくても以前は入る機会が限られていましたが、美術館であればどなたでも気軽に訪れることができます。是非、畳敷きの空間で新しいスタイルのアート鑑賞を心ゆくまでお楽しみください。

※「ぎおん」の漢字表記はメルマガ配信の都合上「祇園」で統一しております。

取材協力 : フォーエバー現代美術館 祇園・京都
〒605-0074 京都市東山区祇園町南側570-2
電話番号 : 075-532-0270
FAX番号 : 075-532-0271

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