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京都通

  • 2019/11/9

第350回 六道珍皇寺『京都東山・六道さんでいただけるありがたい御朱印』

御朱印はいつから始まったんやろか

京都での楽しみといえば、やはりお寺や神社めぐり。
そんな寺社仏閣とのご縁をより深めてくれるのが、御朱印めぐりです。

御朱印とは寺社仏閣でいただける手書きの墨書と朱色の押印のことをいいますが、そもそもいつからあったのでしょうか。

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御朱印集めの原点は諸説ありますが、一説には平安時代に始まった「西国三十三所」などの巡礼にあります。
巡礼では必ず写経をお寺に納めますが、その納経の証としていただける、いわゆる受付証だったと考えられています。
特に江戸時代中期、巡礼を目的とした旅行が庶民の間で大流行すると、御朱印は一つの文化として一気に広まりました。

やがて全国に霊場が作られ、七福神めぐりなど神社にも広がり、今では多くの寺社仏閣で御朱印をいただけるようになりました。
御朱印はお寺のご本尊や神社の神様の分身とされているものです。
心して授与していただきましょう。

今回は、ありがたい御朱印をいただける六道珍皇寺をご紹介いたします。

冥界とつながってる井戸があるんどすえ

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京都の花街・祇園を少し下がったところにある六道珍皇寺は地元の人から「六道さん」と呼ばれ親しまれています。
創建は定かではありませんが、1200年以上前からあったとされており、この辺りはその昔、鳥辺野(とりべの)という葬送地に死者を運ぶための道で「六道の辻」と呼ばれていました。

「六道」とは仏教用語で死者が転生するところを指し、地獄道、餓鬼道、畜生道、修羅道、人間道、天上道の六種類の迷界のことをいいます。
この六道の分岐点、いわゆるこの世とあの世の境として、古来より冥界への入口と信じられてきたのが六道珍皇寺です。

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また、嵯峨天皇に仕えた平安初期の官僚で、小野妹子の子孫にあたる、小野篁(おののたかむら)が夜ごと冥界に通うために使ったという「冥途通いの井戸」が本堂裏にあり、冥界で亡き者を裁く閻魔(えんま)大王に仕えていたという伝説が残っています。

近年、篁が冥界から戻るのに使ったという井戸も発見され、こちらは「黄泉がえりの井戸」と呼ばれています。
恐る恐るのぞいてみると、深い闇の中に吸い込まれそうに。
遊び半分でのぞくと、閻魔大王の怒りに触れてしまうかもしれませんので、くれぐれもご注意を。

地獄絵図など貴重な寺宝が見られるんやて

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六道珍皇寺では年に数回、特別公開期間が設けられています。
「令和元年秋の寺宝展」の後期特別公開は11月23日(土・祝)、24日(日)に行われ、平安時代の作であるご本尊「薬師如来像」、小野篁作と伝わる「閻魔大王像」、「冥途通いの井戸」など貴重な寺宝が拝見できます。

なかでもじっくりご覧いただきたいのが「熊野観心十界曼荼羅(くまのかんじんじっかいまんだら)」で、「人は死後どこへ行くのだろう?」といった疑問に答えてくれる奥深いものとなっています。

絵の上半分は産湯につかる赤ん坊が成人していき、やがては杖をついた老人となって死ぬまでの人の一生が描かれています。
その後はどこへ行くのかというと、絵の下半分にその答えがあります。
生前の罪の重さにより、どの世界に行くかを閻魔大王が振り分けるのですが、なかでも一番苦しいのが地獄道。
舌を抜かれたり、火あぶりにされたりと恐ろしい責め苦が続きます。

もちろん、誰もこんなところには行きたくはありません。
だからこそ、先祖を供養したり、よくない行いをしたときには悔い改めたりと、日頃から自分に恥じない清く正しい生き方をしましょうと教えを説いているのです。

お茶は町衆の疲れをとるお薬やったんや

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もう一つ、興味深いのが室町時代の境内の様子を描いた「珍皇寺参詣曼荼羅(ちんのうじさんけいまんだら)」です。

ご本尊の薬師如来や本堂、冥途通いの井戸も絵の中に見てとれます。
閻魔大王の横に立つ小野篁の姿も見られ、善光寺如来の悲運の話や源氏の武将、熊谷直実が一ノ谷の合戦で平家清盛の弟の教盛の息子(美少年)を泣く泣く斬った話を語り部が参拝者に聞かせている様子など、お寺全体が冥界と世の無常を表しており、あの世を体感できる場だったということが分かります。

当時、お寺には貴族や公家しか参拝することができませんでしたが、境内の外に目をやると、昔の五条通を行きかう町衆の楽しげな姿に、お茶や団子、わらじなどを売る出店もあって、和やかな雰囲気が伝わってきます。

この時代、お茶は薬として飲む習慣もあったようです。
町行く人が身体の健康を取り戻すために飲んでいたのだそうです。
民衆の暮らしが垣間見られるほか、千利休が茶道を確立するもっと前の時代から、茶筅(ちゃせん)で点てたお茶を町衆が飲んでいたというのも新たな発見です。

季節とともに御朱印も変わるんどす

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六道珍皇寺では特別公開の期間のみ授与される限定のオリジナル御朱印(金泥の書きおき)があります。

公開される寺宝に合わせて、「薬師如来」「小野篁卿」「閻魔大王」などの数種類の御朱印があり、紙も春は若草色、夏は瑠璃色(紺色)、秋は紅葉色とさまざまです。
ご本尊「薬師如来」が瑠璃光如来とも呼ばれることから朱印用紙には瑠璃色が使われるほか、どれも季節の移ろいを感じさせてくれる彩りの楽しい御朱印です。

そして、金泥の金色で描かれているのは、仏様の色はたいていが金と決まっており、さらにはこのお寺は閻魔大王とご縁があるからだそうです。
閻魔大王が亡き者をどの世界に輪廻させるかを判断するのですが、書記が行き先を書いた金紙を金札といっていました。

どちらかというと、生前に善い行いをした人が極楽浄土へ行くために書かれたのが金札ということで、そう思うと、金色の字にありがたみをより一層感じます。

書き手の心づかいにも感謝しまひょ

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御朱印を書く方が違うと、御朱印自体の印象も変わってきます。
このお寺にも御朱印を書く方が何人もいらっしゃいますが、他の人と同じ字にならないよう特徴を出しているそうです。
そのため、「今回はこの方に書いてもらおう」と書き手違いで御朱印を集める方もいらっしゃいます。

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また、御朱印帳の大きさや紙質も違えば、墨の濃さやにじみ方も違ってきます。
長年、御朱印を書いていらっしゃる方は
「裏の紙に墨がにじまんよう、間に紙を挟んで書くようにしています。よその仏さんを汚したくないですから。
それから、紙の上に筆を置いたときの感じで、その後の書き方が変わってくるので、御朱印は一期一会やと思っています」
とのこと。

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御朱印の種類はたくさんありますが、年に数回ある寺宝展ごとに、その都度公開される仏様に合わせた御朱印が数種類ずつ授与されます。
ご自身が求められる仏様の前でそっと手を合わせながら、御朱印を集めていくのが六道珍皇寺をより楽しむポイントかもしれませんね。

取材協力 : 六道珍皇寺
〒605-0811 京都市東山区大和大路通四条下ル4丁目小松町595
電話番号 : (075)561-4129
FAX番号 : (075)561-4129

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